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zoom RSS カープ〜カープ男子のクラス替え〜

<<   作成日時 : 2018/03/21 12:20   >>

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熱血漢じゃない体育教師というレアな先生がうちのクラスの担任だった。

クラス替え初日にして仏頂面で目もうつろ、やる気オーラというものが感じられない先生も珍しいのではないか。

副担任が適任のこのおじさんに進路を相談することはおそらくないだろう。

先生がクラスの生徒達に順番に簡単な自己紹介をするように促した。

二年生から三年生に上がる時はクラス替えがない。

だからここから二年間のクラスメイトというのは一年生の時のそれとは比重が異なる。

パッと見たところ男子は一年生でクラスが一緒だった小早川と、中学が一緒の今井しか知っているやつがいない。

女子は全員知らない。

いきなり心細い。

これからクラスでどういうポジションで立ち振る舞えばいい?

僕はクラスの中心人物になるような人間ではない。

けれども主流派には入っていたい。

地味でいいけれど、無視はされたくない。

いい感じのポジションに収まりたい。

ついでにかわいい女子がいればラッキー。

そんな思惑がある中、ひとりずつ、自分の席がある場所で起立して自己紹介を始めた。

あの〜自分よりも席が前の人は自己紹介の時に振り返ってくれないと顔が見えないんですけど

という問題がすぐに発生したが

まあ、おいおい覚えるっしょ

と、すぐに妥協した。

「友達少ない寂しがり屋なんで声かけてください」

と明るく自己紹介した女子は友達多そうなやつだった。

「将来の夢はアナウンサーになることです」

と大きな通る声で大発表し教室をどよめかせた男子は僕にとっては絡みにくそうなやつだった。

そんな中、僕の番となった。

つかみは大事だ。

一発かました方がいいのだろうか?

だが、僕はガチで友達いないし、将来の夢もない。

カープオンリーのモノカルチャー。

「熱狂的カープファンです。よろしくお願いします」とベタな自己紹介をして着席した。

当時のカープは「広島ではカープと水はタダ」と言われており、日常的ではあるものの、高校生の間ではわざわざ話題に取り上げられるほどのコンテンツではなかった。

むしろ発足したばかりのJリーグの方にブームがきており、にわかサッカーファンが急増していた。

な〜んだ、カープファンか、という白けた空気が流れただけで終了した。



ホームルームが終了し、帰宅しようと、配られたプリントの類をそろえて机の上でトントンしていた時だった。

ねえ、と僕の眼前にとある男子が立った。

ん?なんだ?

ズングリムックリとした体型のこいつは見覚えがあった。

名前は知らないが廊下やグラウンドで見かけたことがあるやつだ。

その体型から勝手に自分の中で「西田」というあだ名をつけていた。

そいつがヘラヘラとした態度で僕に訊ねた。

「おまえ、カープ好きなん?」

お・・おおう。そうでー。カープ好きでー。

どういう距離感で答えればいいのか分からない。探りながらぎこちなく答えた。

「年何回くらい観に行くん?」

え?え〜っと。市民球場に行くのは1年に1回くらいじゃけど。

「はあ?たったそれだけ?そんなんでカープファンって言えるか?」

西田は表情を曇らせた。

え?なんで?いいじゃろ?人それぞれのスタンスで。

「たいしたことないな」

は?たいしたことあるわーい!

「じゃあ、応援歌、歌えるんか?」

は?

「知っとるんか?」

あ・・・当たり前じゃろ。知っとるわい。

なんなんだ、こいつは。グイグイ来やがる。

よう聴いとけよ。こんにゃろ。

西田の勢いに対抗して、うろ覚えの『燃えろ赤ヘル僕らのカープ』を小声で歌う。

ムキになったが、大声で歌うのはさすがに抵抗がある。

僕らは今、クラスメイトとはいえ初対面の人間同士で何をしている?

この画、シュール過ぎない?

どうよ?西田。

「おまえ、それ歌詞間違えとるで」

え?そうなん?これで覚えてたんだけど。ぶち恥ずいじゃん。

ダメ出しをくらう。

はあ〜、とため息を吐いた西田はそのままスタスタと教室を出て行った。

帰ったようだ。

なんなんだ?

一体?

気が付くと教室には僕と数名の女子が残されただけだった。

熱狂的カープファンと豪語した僕。

それを西田が査定したところ、たいしたことないカープファンだった。

それに気づいた人間はいない。

どうでもいい案件だろう。

だがモノカルチャーな僕には席から立ち上がれないほどのズドーンとくるようなダメージがあった。

自分では得意だと思っていたものが他人と比べればそうでもなかった。

窓際に陣取る数名の女子のヒソヒソ声は僕をあざ笑うものに聞こえてきた。

完全な被害妄想に陥る。

プリントをトントンさせる僕。

冷静になって気持ちを取り戻した。

応援歌を間違えて覚えてたからって何だっていうんだ?

あいつは僕のように毎朝の中国新聞で前田の打率をチェックするという作業まではしてないはずだ。

よし。近々リベンジしてやる。



それにしても教室に残っている彼女たちは一体何を話し込んでいる?

どうも聞き耳を立てると、早速このクラスの男子の品定めをしているようだった。

かっこいい男子がいたか?とかそんな話だ。

ふむ。僕には関係のない話だ。

さっさと帰ろうとした刹那、とある女子の声が耳に飛び込んできた。

「あの人、かわいくなかった?カープファンの!」

「誰?カープ?そんなのいた?」

「おったよ」

「え、分からん」

耳たぶが熱くなった。

え?

え?

もしかして?それって?

僕は聞こえていないふりをしていたが、しっかりと聞き耳を立てた。

「分からんかね?カープの!八重歯がかわいくなかった?」

お?

おお!

自分の事じゃんよー!

いいぞ!がんばれ!オレ推しの女子!

含み笑いをこらえていた僕は、端から見れば気持ち悪い表情をしていたかもしれない。

「誰?かわいい?え〜、そうなん?」

「ま、たいしたことないか」

たいしたことないんかーい!



結局、その後の高校生活で、西田とは仲良くなった。

一方、僕の事をちょっと推してくれた女子は一体誰だったのか?それを特定するには至らなかった。

そうなるかな?とは予感していたが、ヒットはおろか四球のランナーすら出ない、たいしたことないポジションの、たいしたことない高校生活。

たいしたことない順位で、たいしたことない観客動員で、それでもやっぱりカープが近くにいてくれて・・・。

何かを変えたくて、でも変わらなくて・・・。

あれから何年経った?

カープは今年3連覇と日本一を目指すって?

ほほう、

そいつは、

たいしたもんだ・・・。

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